OSAKA心血管エコー研究会公式ブログ    HP: http://osakacvecho.com

当会は超音波技術と知識の習得を目的とした研究会で、 実地臨床にすぐに役立てることができるセミナーやカンファレンス形式の自由参加型の勉強会です。

平成26年度特別講演(10月24日 金曜日)盛会で終了!

平成26年度特別講演盛会で終了しました

今年度は,桜橋渡邊病院循環器部長の 岩倉克臣先生にお越し戴き,熱のこもったご講演をして戴きました.参加者80名近くご参加戴きました.時間超過にも関わらず,参加者のみなさん最後まで拝聴くださり有り難うございました.

心エコー領域の業界では,収縮性の低下より先に拡張能が低下することから左室拡張性が注目され,左室流入血流速度 E/Aやdeceleration time,拡張期僧帽弁輪運動速度 E’,左房容積を計測するようになりましたよね.他に収縮性の評価としては当然MOD法(いわゆるシンプソン法)による左室駆出率(LVEF)も計測しますよね.心筋虚血の場合には,目に見えた収縮障害であるため,その程度をasynergy評価に始まり,LVEF(Mod法),cardiac output,左室容積などを計測しますが,収縮性の低下の裏には当然拡張性は低下しているので,私は心筋虚血の場合の拡張能評価はあまり当てにしていませんでした.しかし,今回のご講演で解剖学的な解説をいただき拡張能の重要さがよく分かりましたね.さらに下側壁梗塞の場合では機能性僧帽弁逆流が起こる可能性が有ります.そうなると,MRの評価も行わないといけません.ガイドライン上では機能性MRは中等度から治療の対象となるので,MRがあった場合には機能性か器質性かの判定と重症度評価が必要になってきます.また,病態の進行は肺高血圧を招く恐れがあり,三尖弁逆流圧較差(TRPG)の計測,右房圧の推定に計測される下大静脈径も計測する必要がありますね.そうです!心筋虚血だとasynery評価からTRPG測定まで,収縮性の評価と拡張性の評価,計測することが沢山あるから大変なんですねー.ただし,注意点としてMRが重症化するとE波が増高するのでE/Aは小さくなります.また,下側壁梗塞では,壁運動の低下に伴いE’は低値になりますので注意が必要です.しかし,それら以外では,心筋虚血でも拡張能を見ていく必要がありそうですね.本当に勉強になりました.有り難うございました.

 岩倉克臣先生の私からの紹介です

冠動脈の走行(血管造影)と心エコーの短軸断面や,心尖部断面に当てはめて,心筋虚血の状態をシステマチックに解説したのは,日本では岩倉先生が最初です.また,現在,岡山大学循環器内科教授であります,noreflow現象を世界で初めて発見した伊藤浩先生が以前に桜橋渡邊病院にいらっしゃったときに,片腕として居たのは岩倉先生で,岩倉先生はいわば心エコーによる虚血診断の大家です.「セブンイレブンLMT」という言葉を知ってますでしょうか.これは急性期冠動脈虚血の診断において岩倉先生が名付けられた名言です.すなわち左室短軸断面において11時から7時の位置の広範囲にasynergyがみられたら左冠動脈主幹部(LMT)が原因で非常に危険な状態だという,緊急事態でもパニックに陥らず冷静に判断するための格言です.今回のご講演では触れられませんでしたが,非常にわかりやすい格言だと今も心に残っております.みなさんも是非覚えておいてくださいね.

 最後に岩倉先生は,他の講演ではわりとキャッチーな講演をされますが,今回は,当会のレベルにあわせ,やや中上級者用のご講演を賜りました.このようなご講演を賜れるのは,技師の会ではそれほど多くないと思います.多くの知識は病変の早期発見に繋がります.難しい内容かも知れませんが明日の患者さんのために引き続きご参加ください.

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